旭川地方裁判所 昭和54年(ワ)38号 判決 1979年5月30日
原告 株式会社報徳建設
右代表者代表取締役 鈴木誠一
被告 有限会社西田建設
右特別代理人 西田美和子
主文
債権者原告と債務者被告との間の旭川簡易裁判所昭和五四年(ロ)第九七号督促事件の同年二月二日付支払命令に対する債務者被告の同月八日付異議申立を却下する。
事実及び理由
本件記録によれば、(一)債権者原告と債務者被告との間の旭川簡易裁判所昭和五四年(ロ)第九七号督促事件(以下「本件督促事件」という。)について、同年二月二日付で支払命令(以下「本件支払命令」という。)が発せられたこと、(二)本件支払命令は、同月三日、「債務者代表者西田稔一」あて送達されたこと、(三)「債務者有限会社西田建設代表者代表取締役西田稔一」名義で、同月八日、本件支払命令に対する異議申立書が提出されたこと(以下「本件異議申立」という。)、(四)旭川簡易裁判所書記官は、本件異議申立により、本件支払命令に係る請求について、その額金一九五万円に従い、旭川地方裁判所に訴の提起があったものとみなされるとして、本件督促事件記録を、同月九日、旭川地方裁判所書記官に送付したこと、(五)その後、右西田稔一が、既に同年一月三一日死亡していたことが判明したこと、以上の事実が認められる。
右認定の事実によれば、本件支払命令の送達は、右西田稔一の死亡による本件督促事件手続の中断中にされたものであるから、無効であるというべきであり、したがって、有効な送達を前提とすべき本件異議申立は、不適法であり、その欠缺は補正できないものであることが明らかであるから、原告の本件支払命令に係る請求は、当裁判所に訴の提起があったものとはみなされないといわざるを得ない。ところが、右認定の(一)ないし(四)の事実の経過により、形式上、右請求が、当裁判所に係属するかのような外観を呈するに至っている。そこで、当裁判所は、右形式上の係属を排除するため、民事訴訟法第四四一条の趣旨に則り本件異議申立を却下することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 清永利亮)